犬を仰向けにして服従させないといけないの?
飼い主と犬の上下関係をはっきりとさせるために、犬に仰向けの状態でお腹をださせ力で押さえつけたり(アルファロールオーバー)、犬のマズル(鼻先)を力でつかんだりする(マズルコントロール)ことで、服従的な立場を認識させることが必要だといわれてきました。しかし、これらの方法で犬を服従させることが、しつけや問題行動の改善をする上で本当に重要なことなのでしょうか?
服従は恐怖心によって委縮しているだけ
アルファロールオーバーやマズルコントロールによって犬が飼い主の言うことを聞くのは、飼い主に対して犬が恐怖を感じ、委縮して何もできなくなるだけだからです。犬は、基本的に自分の意志に反してお腹や口周りを触られることがあまり好きではないため、その嫌な部分を飼い主が力で押さえつけることで犬に恐怖心を与え、委縮させることで犬に言うことをきかせているのが、アルファロールオーバーやマズルコントロールを用いた犬のしつけや問題行動の改善方法の原理となります。
しかし、犬は恐怖心を感じた際、吠えたり咬みついたりといった攻撃行動を示すことで、その状況から自分の身を守ろうとします。それは飼い主に対してでも例外ではなく、アルファロールオーバーやマズルコントロールを行うことで、飼い主を恐怖の対象とみなしてしまえば、飼い主に対して威嚇したり攻撃を示したり問題行動に発展する可能性があります。
動物病院の診察やトリミングの際に、一見おとなしくお利口にしていても、実は診察やトリミングに対して極度の恐怖を感じ、硬直して動けなくなっているだけの場合も多く見受けられます。
そもそも飼い主が犬とどのような関係を築きたいのか?
もちろん、人が犬のお腹やマズルを触ることは、診察やトリミング、日頃の健康管理などで必要になってきます。しかし前述したように、犬はそもそもお腹やマズルを自分の意志に反して触られることがあまり好きではないので、子犬の頃から犬が恐怖心を与えないように、触られることと大好きなご褒美を結び付けて慣らせてあげれば、犬は安心して飼い主を受け入れてくれるようになります。
犬は安心して暮らせるための養育を飼い主に求めています。家族の一員として犬を迎え入れたのであれば、飼い主の一方的気持ちを無理強いし、威圧的な存在となって言うことをきかせるのではなく、犬の気持ちを察することで安心感を与え、信頼できる存在になることで犬が自発的に受け入れてくれる関係を目指すべきではないでしょうか?